「秋の歌」あるいはマスオさんのヴァイオリン [音楽]
突然サザエさんである。昨日24日放送分でいつになくサザエさん、センチメンタルな気分になったとかで、優しくて妻想いなマスオさんがヴェルレーヌの詩集を取り出したり、ヴァイオリンを奏でたり・・・。
マスオさんが朗読したのはポール・ヴェルレーヌ「Chanson d'automne/秋の歌(落葉)」だったかな。 なかなか波瀾万丈な人生を送ったポールさんがこの詩に詠んだヴァイオリンが今日のテーマ。
ヴァイオリンは艶やかな音色で魅了するポピュラーな弦楽器。ピアノが楽器の王様なら、ヴァイオリンはさしずめ女王様。ヴァイオリンのための楽曲も数えきれないほどありますが、ヴェルレーヌが「秋の歌」でイメージしたのはどんなフレーズだったのか。
ヒラヒラと舞い落ちる落葉を観て、なにかメロディをインスピレーションしたのか、窓越しに聴こえるヴァイオリンの音が路上に舞い散る枯れ葉とシンクロしちゃったのかは定かではありませんが、"長いすすり泣き" 、"傷心"、"怠惰"で"単調"な調べとなると、大規模な管弦楽でも協奏曲でもなく、ヴァイオリン・ソナタか独奏かだと感じます。
上田敏の訳では「秋の日のヰ゛オロンの ためいき」と、吐息めいたヴァイオリンの音が耳に届いたようにも思われますが、堀口大學訳では「秋風のヴィオロンの節ながき啜泣」となって、風の音がヴァイオリンめいて聴こえたともとれます。
ヴェルレーヌの時代ならロマン派、楽器が色々改良されて音色的にも華やかになってきている頃ですが、訳詩のせいでどうもイメージは古典派めいてしまう。
タイトルのchansonからすれば歌曲ってこと? もっと世俗的な楽曲を想い描いたのかしらン?
シャンソンの名曲に「枯葉」がありますが時代が合わない。ワタクシが知る中で一番イメージが近しいのはジャン・ポール・マルティーニ作曲の「Plaisir d'amor/愛の喜び」かなァ。これならヴォルレーヌも聴いている可能性はある。タイトルとは裏腹に、愛を失った男が抱える心の傷を唄った曲。歌曲として有名ですが、ヴァイオリンが変奏曲として演奏したのか、伴奏として伴っていたヴァイオリンの音色が心に響いたのか。奥さんを棄ててアルチュール・ランボウと同棲しちゃったり美少年に恋い焦がれたりする人ですから、そのへんがちょっと微妙なのですが、風に弄ばれながら落ちて行く枯れ葉が思い起こさせるメロディが心の傷を疼かせたのは間違いないのでしょうね。
ヴォルレーヌもマスオさんも"秋"、"哀愁"、"ヴィオロン(ヴァイオリン)"と連想ゲームになっちゃったように、秋には物悲し気なヴァイオリンが似合うのかも知れませんねェ。
今日みたいな秋の雨にはヨハネス・ブラームスの"ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調 「雨の歌」"ぐらいがちょうどよろしい。重苦しいアダージョはドハマりし過ぎで物悲しいを通り越して憂鬱になりそうで・・・。
哀愁的なヴァイオリンとなると、パブロ・デ・サラサーテ作曲の「ツィゴイネルワイゼン」を思い出しそうですが、関西ではこの曲、吉本新喜劇の桑原和男師匠のギャグネタ「神様ァ〜」を連想してしまうところがどうもなァ・・・。
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