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テンペスト 2 [音楽]

さて、「テンペスト」の続きであるが、前回はベートーヴェンのピアノソナタとシェークスピアの戯曲との関係を考えてみたので、今回はそれ以外の「テンペスト」を探ってみます。

ウィリアム・シェークスピアの戯曲の数々は後世の文学作品に多大な影響を与えたが、音楽界にもそれは伝播し、前回のベートーヴェンを始めかなりの数の作曲家がシェークスピア作品からインスパイアされた楽曲を残しています。

数え上げればキリがないでしょうが、有名どころとしてまずはピョートル・チャイコフスキー。この先生、シェークスピアにかなりご執心のようで「幻想序曲 『ロメオとジュリエット』」、「幻想序曲『ハムレット』作品67a」とともに「幻想序曲『テンペスト』作品18」を作曲されています。何れの楽曲もタイトル通り沙翁の戯曲をテーマとしています。
リヒャルト・シュトラウスは「交響詩『マクベス』作品23」を書き、ジュゼッペ・ヴェルディもご執心組、「マクベス」や「オテロ」を題材にオペラを作り、セルゲイ・プロコフィエフは「ロミオとジュリエット」をバレエ音楽にしたり、管弦楽のための 演奏会用組曲にしたり、ピアノ組曲に仕上げたり・・・。エクトル・ペルリオーズも「ロミオとジュリエット」、フェリックス・メンデルスゾーンは「夏の夜の夢」、ジャン・シベリウスも「テンペスト」を題材にしているようですね。
多分つぶさに調べれば枚挙に暇がないでしょうが、とりあえず有名どころということで・・・。

ちょっと路線を変えて、シェークスピア作品から着想を得て作られた映画やミュージカルまで含めれば、膨大といっていいくらい。ポピュラーミュージックまで見回せば天文学的数字・・・になるかも。

拡げ出したらキリがないのであくまで「テンペスト」に拘ります。

他のシェークスピア作品と同様に「テンペスト」も何度か映像化されていますが、ワタクシことたーぱぱがお勧めするのはピーター・グリーナウェイ監督の「プロスペローの本(Prospero's books)」。1991年の作品。
グリーナウェイ独特の構図、絢爛豪華な衣装や装置で不思議な"テンペスト世界"を具現化していましたが、さらに印象づけていたのがその映画のために作られた音楽。いわゆるサウンドトラックですか。
グリーナウェイ作品の多くはマイケル・ナイマンが作曲・演奏を手がけているのですが、「プロスペローの本」もマイケル・ナイマンがスコアを書きピアノを演奏しています。
マイケル・ナイマンといえば映画「ピアノ・レッスン」で大注目となり、トヨタ・クラウンのTVCMでも曲が使われたり、本国では多方面に活躍されているようですが、日本から見れば映画音楽の人ってイメージですね。Wikipediaによるとミニマル・ミュージックの作曲家となっていますが、ミニマルの枠に収まっていない伸びやかさも持ち合わせています。ワタクシの好きなのはパトリス・ルコント監督の「髪結いの亭主」、そのサウンドトラック。あと、「ピアノ・レッスン」ね。

話しを戻して「プロスペローの本」。サウンドトラックCDにはこの映画のために書かれた14曲が収められています。映像化された「テンペスト」の各シーンに合った小品を集めた形になっているのでいわば組曲となるのでしょうが、ベートーヴェンのピアノソナタとチャイコフスキーの演奏会用序曲と聴き比べてみると面白い。
ナイマンはこの仕事を受けた時にベートーヴェンやチャイコフスキーを参考にしたのかどうか。
マイケル・ナイマンはピアニストでもあるが、この作品ではマイケル・ナイマン・バンドとして、基本となる弦部に多彩な管楽器を加え、さらには歌手まで揃えて、シェークスピアが戯曲に散りばめた詩を唄わせている。
ベートーヴェンのピアノソナタ第17番は1802年頃に、第23番は1804〜1806年頃に作られて、チャイコフスキーの幻想序曲 作品18は1873年に書かれたらしい。一方はウィーンでもう一方はロシア。"嵐"のイメージも異なるでしょうし、片やピアノ1台のソナタ、片や管弦楽の 幻想曲。時代も風土も編成も異なるけれど、テーマは同じ。
ベートーヴェンのピアノソナタは、シェークスピアの戯曲「テンペスト」から得た印象を1台のピアノで演奏するために抽出されたひとしずくのエッセンス。チャイコフスキーの幻想曲はぎゅぎゅっと濃縮された予告編かあらすじめいた仕立て。
対してマイケル・ナイマンの作品はシーンごとの断片を集めたコラージュ。
どれもよく出来た聴き応えのある作品。シェークスピアを読まなくても、お芝居や映画を観なくても単独で十分楽しめますが、秋の夜長に聴き比べてみるともっと楽しい・・・かも。

シェークスピアの頃にはメディアミックスなんて考えていたのかどうかは不明ですが、今やひとつのテーマは各方面へ形を変えながらも拡散していく時代。媒体やらジャンルやらに囚われないで、味の判断はまず食してから。食わず嫌いは絶対に損!!


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