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歌曲の心 [日常・雑感]

今日も振替休日で映画鑑賞。先々週の「ショパン」に続いて、今週は「未完成交響曲〜シューベルトの恋」。1958年公開、カラー、モノラルのオーストリア映画です。モチロン、主役はタイトル通り歌曲王フランツ・シューベルト。
シューベルトを演じるのはオーストリアを代表する指揮者カール・ベームの子息カールハインツ・ベーム。歌手ショーバー男爵役のルドルフ・ショックは戦後のドイツを代表する名テノール。
芸術の都ウィーンで彼を取り巻く若き芸術家達の青春群像。恋と友愛、失意と絶望、シューベルトの楽曲とともに愛が散りばめられた音楽映画の金字塔・・・かな!?

 

映画冒頭はルードヴィヒ・"怖い顔"・ベートーヴェンの演奏会から。巨匠自ら演奏する「ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73」に感銘を受けて、拍手することすら忘れた若きフランツ・シューベルト。後日ベートーヴェン宅を訪ね、楽想を練るために散歩するルードヴィヒを見かけ、その影を慕うように交響曲の作曲を始めます。

一方彼の友人達 - 歌手ショーバーと画家シュウィント、詩人クッペルヴィーザーとマイヤーホーファーの4人 - は、フランツが書いた歌曲を世に出そうと本人には内緒で出版社に働きかけたり、フランツに恋歌を書かそうと女の子達と合コン(?)ピクニックを計画したり、時にハメを外しながらも応援を惜しみません。

その甲斐あって、侯爵家のサロンで演奏する機会を得て、ヨハン・ミヒャエル・フォーグルと友情を結ぶこととなり、また、老舗ガラス器店「三姉妹の店」の末娘ハンネレルとの間に初々しい恋が芽生えたり・・・。ハンネレル嬢にピアノを教えることとなったフランツ、大事なのは技術より感情、指先の技巧ではなく心からの演奏が大切だと手ほどきします。

全ては順風満帆、若き芸術家の未来は薔薇色に彩られるかと感じられた矢先、「フィデリオ」初演で自ら指揮をするベートーヴェンは歌い手のミスを聴き取れず「だめか、もう終わりだ」とタクトを置いて劇場を去ってしまいます。それを伝え聞いたフランツは交響曲を書き上げずに残念してしまいます。
また、恋人ハンネレルを慕うのはフランツ一人ではなく、親友ショーバーも彼女を愛していたのでした。

終盤、ハンネレル嬢に想いを伝えようとするフランツ。彼女に歌曲を捧げるためにショーバーに歌ってくれと頼みます。三姉妹の店を訪ね、フランツの伴奏で歌うショーバー。演奏が終って、ハンネレル嬢が飛び込んだのはフランツの胸ではなく、ショーバー男爵の腕の中。過酷な運命を呪うことなく、友達の婚礼を祝福しつつも、自室のピアノの上に突っ伏してしまうフランツであった・・・。

シューベルトの楽曲のみならずベートーヴェンのコンチェルトやオペラまで聴けるお得な(?)音楽映画ですが、作曲された時期とは隔たりがあるのはご愛嬌。ショーバー男爵だけでなく、歌い出したら誰もが美声。庭先で遊ぶガキンチョまで見事な合唱隊。いかにもオーストリアっぽい・・・のかな。

今では「歌曲の王」とまで呼ばれるシューベルト。友人達や出版社は歌曲を売り出そうと躍起になってくれるのですが、本人は交響曲を聴かせたいとしているところが面白い。
史実とは違うのでしょうが、ベートーヴェンへの憧憬、彼を取り巻く芸術家達との友愛、ハンネレル嬢への思慕。登場する男達は時にやんちゃなこともするけれど優しくてジェントル。女達は可愛くてチャーミング。愛にあふれた作品であると同時に、聴力を失ったベートーヴェンの苦悩や大作を物したい若い作曲家の焦燥まで盛り込んで、今観ても感動出来る名作。

サロンでの「楽によせて」の演奏シーンでは作曲家シューベルトより宮廷歌手フォーグルへの賞賛、プロポーズのシーンでもシューベルトの想いよりショーバーの歌声が恋人ハンネレルの胸を打ってしまう。"技術"より"感情"と言いながら、ピアノを通したフランツのココロは誰にも伝わらない。
ラストで打ち拉がれるフランツは恋を失ったことより、音楽を通して想いを伝えられなかったことに哀しみを感じたんでしょうね。

ワタクシことたーぱぱがハマったのは、ベートーヴェン役のエヴァルト・バルザーさん。本物のルードヴィヒとは当然面識はありませんが、難しそうな顔してピアノを弾くシーン、後ろ手で楽想を練りながら散歩するシーン、ホールのオケ・ピットで指揮を執るシーン、そして耳が聞こえずに愕然としつつも静かにホールを去るシーン。本物そっくり・・・なんじゃないと思わせるほど、ベートーヴェンの霊がついてるんじゃないかと思わせるほどベートーヴェンぽく感じましたね。

三姉妹の家の前でフランツが階上を見上げるシーンで流れる「白鳥の歌 第9曲 "セレナーデ"」と結婚式が執り行われた大聖堂で歌われた「エレンの歌 第3番 "アヴェ・マリア"」。トリハダがたちそうに感動的でした。

こういう映画こそビデオ化して欲しいんだけどなァ。


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